長引く肩の痛みを改善するために知っておきたいこと

こんにちは、パーソナルトレーナーの堀航大です!

「腕を上げると肩が痛む」「一度楽になっても、また痛みが戻ってしまう」と悩んでいませんか?

肩の痛みにはさまざまな原因や状態があり、適切な対応方法も一人ひとり異なります。

この記事では、肩の痛みが長引くときに知っておきたい基礎知識と、医療機関での評価を受けたあとに運動で改善を目指す際の考え方をご紹介します。

・医療機関で大きな異常はないと言われたものの、痛みが続いている
・マッサージやストレッチで一時的に楽になっても、また気になってくる
・安静にした方がよいのか、少しずつ動かした方がよいのか分からない

肩の痛みは、痛む場所だけを揉んだり、一律のストレッチを行ったりすれば改善するとは限りません。

現在の状態を確認したうえで、生活や仕事で肩にかかっている負担、動かせる範囲、筋力、運動後の反応などを整理しながら、無理のない方法を選ぶことが大切です。

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師による診断や治療の代わりになるものではありません。

肩の痛みが続いている方は、自己判断だけで運動を始めず、まずは整形外科などの医療機関へご相談ください。

肩の痛みにも
さまざまな種類があります

まずは医療機関で状態を確認しましょう

一口に「肩が痛い」といっても、その背景にはさまざまな状態が考えられます。

痛む場所や腕を動かせる範囲だけでは、肩関節周囲炎、腱板の障害、石灰沈着性腱板炎などを正確に区別できないことがあります。

整形外科では、症状が始まった時期やきっかけ、痛む動作、夜間痛の有無、関節の動き、筋力などを確認し、必要に応じてX線、超音波、MRIなどの画像検査を行います。

パーソナルトレーナーが行う動作確認や体力評価は、医師による診察や画像検査とは役割が異なります。

肩の痛みが続いている場合は、トレーニングを始める前に医療機関で状態を確認し、運動を行ってもよい状態か判断してもらうことが大切です。

特に、次のような場合には早めに医療機関へ相談してください。

・転倒や衝突のあとから強い痛みがあり、腕を動かせない
・肩の形が変わっている、強く腫れている
・突然、非常に強い痛みが生じた
・肩が赤く腫れ、発熱を伴っている
・腕に明らかな力の入りにくさや、しびれがある
・夜も眠れないほどの痛みが続いている
・時間の経過とともに痛みや運動制限が強くなっている

痛みを我慢して動かし続けたり、自己判断で強いストレッチを行ったりすることは避けましょう。

肩の痛みとして現れる主な状態

肩の痛みを起こす代表的な状態には、次のようなものがあります。

肩関節周囲炎
いわゆる四十肩・五十肩と呼ばれる状態です。肩の痛みとともに、腕を上げる、背中に手を回す、着替えるといった動作が難しくなることがあります。

腱板関連肩痛
腕を上げるときなどに、肩の前側や外側に痛みを感じる状態の総称です。腱板の腱や周辺組織が関係することがあります。

腱板断裂
肩関節を支える腱板の一部または全層が断裂した状態です。運動時痛や夜間痛、腕の力の入りにくさなどがみられることがあります。

石灰沈着性腱板炎
腱板の中に石灰が沈着し、炎症を起こす状態です。突然、非常に強い痛みが現れ、肩を動かせなくなることがあります。

肩関節の不安定性や脱臼
外傷や繰り返しの負担などにより、肩が外れたり、抜けそうな不安感を覚えたりする状態です。

首や神経など、肩以外に由来する痛み
首の神経や周辺組織の問題によって、肩から腕にかけて痛みやしびれが現れる場合もあります。

これらは別々の状態であり、必ず「炎症から損傷、断裂へと順番に進行する」というものではありません。また、複数の状態が重なっている場合もあります。

症状の名称によって、積極的に動かす時期と負担を減らす時期が異なるため、自己判断で対応方法を決めないことが重要です。

医師から運動を行ってもよいと判断されたあとは、痛みの状態や関節の動きに合わせて、少しずつ日常動作や運動を再開していきます。

肩の痛みが
なかなか改善しない理由

肩は複数の部位が協調して動く場所です

肩の動きは、一般に「肩関節」と呼ばれる一つの関節だけで生まれているわけではありません。

上腕骨、肩甲骨、鎖骨、胸郭などが連動することで、腕を前後左右へ大きく動かすことができます。

※ブルーで選択した部分が肩周辺を構成する骨
画像出典:ビジブル・ボディの提供による画像

腕を上げるときには、上腕骨が動くだけでなく、肩甲骨が肋骨の上を移動し、鎖骨もわずかに動きます。

また、腱板をはじめとする複数の筋肉が、腕を動かす役割と関節を安定させる役割を分担しています。

そのため、肩の状態を考える際には、痛む場所だけでなく、関節の動き、筋力、肩甲骨や体幹との連動、生活や仕事での負担などを総合的に確認する必要があります。

ただし、特定の姿勢や一つの動作だけを見て、それが肩の痛みの原因だと断定することはできません。

身体の特徴には個人差があり、同じような姿勢や動きをしていても、痛みがある方とない方がいるためです。

痛む場所だけを整えても不十分な場合があります

肩が痛むと、痛む部分を揉む、伸ばす、冷やす、温めるといった対応に意識が向きやすくなります。

こうした対応によって、一時的に痛みや緊張が和らぐことはあります。

しかし、日常生活や仕事、スポーツなどで肩にかかる負担が、現在の肩が受け止められる範囲を上回っていれば、症状が再び現れる可能性があります。

反対に、痛みを恐れて長期間まったく動かさないことで、関節の動きや筋力が低下し、日常動作へ戻りにくくなる場合もあります。

肩の痛みが長引くときには、次のような点を整理することが大切です。

・どのような動作で痛みが出るのか
・一日に何回くらい、その動作を繰り返しているのか
・仕事や家事、スポーツの負担が急に増えていないか
・睡眠や休養を十分に取れているか
・痛みを避けるために、ほかの部位へ過度な力が入っていないか
・運動中だけでなく、運動後に症状がどのように変化するか

「身体のどこか一か所に、すべての原因が隠れている」と考えるよりも、症状を悪化させている可能性のある要素を一つずつ整理し、調整できる部分から取り組むことが現実的です。

改善を考えるうえで
注目したい二つの視点

一つの理想的な動きに当てはめないことが大切です

肩の痛みを運動によって改善していく際には、肩周辺の動きを細かく確認することがあります。

ただし、人の身体には骨格や筋力、柔軟性、運動経験などの違いがあり、すべての方がまったく同じ動きをするわけではありません。

見た目を一つの「正しいフォーム」に合わせるのではなく、本人が無理なく動けているか、痛みや不安が増えていないか、目的とする動作を行えるかという視点が重要です。

そのうえで、肩の運動を考える際には、次の二つの視点が役立ちます。

①肩甲骨を含む肩全体が協調して動いているか?
②上腕骨や腱板にかかる負荷を調整できているか?

これらは、肩の痛みを説明する唯一の原因ではありません。

しかし、医療機関で運動を行ってもよいと判断された方が、肩の動きや負荷への対応力を取り戻していく際には、大切な確認項目になります。

①肩甲骨を含む肩全体が協調して動いているか?

腕を上げるときには、肩甲骨も肋骨の上を滑るように動きます。

肩甲骨は、腕が上がるにつれて上向きに回転し、傾きや向きを変えます。鎖骨や上腕骨の動きも加わることで、頭上へ手を伸ばす動作が可能になります。

【動画:肩甲上腕リズム(背中側から)】


映像出典:ビジブル・ボディの提供による画像・映像
※映像は肩の一般的な構造と動きを理解するためのものであり、個人の症状を診断するものではありません。

肩甲骨には、必要に応じて動くことと、腕に力を伝えるために安定することの両方が求められます。

肩甲骨の動きが小さい方もいれば、反対に大きく動く方もいますが、それだけで異常と判断することはできません。

確認したいのは、肩甲骨の形を無理に「正しい位置」に固定できるかではなく、腕の動きに合わせて肩甲骨や鎖骨、胸郭が無理なく協調しているかという点です。

たとえば、胸郭や体幹の動きが小さい場合、頭上へ手を伸ばす際に肩だけで動きを補おうとすることがあります。

一方で、「胸を張る」「肩甲骨を寄せる」といった姿勢を常に保とうとすると、かえって肩や首に力が入り、動きにくくなる場合もあります。

肩甲骨を特定の位置へ固定することを目的にするのではなく、呼吸を止めず、余計な力を抜きながら、必要な範囲を少しずつ動かせるようにしていくことが大切です。

②上腕骨や腱板にかかる負荷を調整できているか?

肩甲骨と上腕骨によってつくられる関節は、浅い受け皿の上にボールが乗っているような構造をしています。

<右肩を前から見たところ> 映像出典:ビジブル・ボディの提供による画像・映像

大きな範囲を動かせる反面、骨の形だけで強く固定されている関節ではありません。

そのため、腱板と呼ばれる筋肉や腱、関節包、靱帯などが協力しながら、上腕骨を支えています。

肩の運動では、上腕骨を「常に一つの正しい位置」に収めることよりも、動作や負荷に応じて周囲の筋肉が適切に働き、関節を安定させられることが重要です。

腱板やその周辺に症状がある場合には、次のような動作で痛みを感じることがあります。

・腕を横や前から上げる
・高い場所の物を取る
・上着を着る、背中に手を回す
・重い物を持ち上げる
・横向きで寝る
・同じ腕の動作を何度も繰り返す

ただし、こうした痛みがあるからといって、必ずしも腱板が断裂しているとは限りません。反対に、腕を上げられる場合でも腱板断裂が存在することがあります。

症状だけで組織の状態を判断せず、必要に応じて医療機関で評価を受けることが大切です。

医療機関で運動を行ってもよいと判断された場合は、痛みの少ない範囲から、肩を動かす練習や筋力トレーニングを段階的に行います。

大切なのは、特定の筋肉だけを鍛えればよいと考えるのではなく、現在の肩が受け止められる負荷を見極め、少しずつ活動量を高めることです。

私自身も、過去に腕を動かした際の強い肩の痛みを経験しています。

その経験は、痛みによって運動や日常生活が制限される不安を理解するうえで役立っていますが、私自身に有効だった方法が、すべての方に当てはまるわけではありません。

一人ひとりの診断や身体状況に合わせて、方法を選ぶ必要があります。

長引く肩の痛みの
改善を目指す方法

原因を一つに決めつけず、必要な対応を整理する

肩の痛みが続いていると、「骨盤のゆがみが原因」「肩甲骨が動いていないことが原因」など、分かりやすい一つの原因を探したくなるかもしれません。

しかし実際には、組織の状態、関節の動き、筋力、活動量、仕事やスポーツの負担、睡眠、痛みに対する不安など、複数の要素が影響していることがあります。

そのため、改善を目指す際には、次のような順序で取り組むことが大切です。

ステップ1:医療機関で状態を確認する

まずは、運動を行ってもよい状態なのか、医療的な治療や安静が必要なのかを確認します。

特に外傷後の痛み、突然の激痛、強い夜間痛、著しい筋力低下などがある場合は、トレーニングよりも医療機関での評価を優先します。

ステップ2:症状を悪化させる負担を一時的に調整する

完全に動かさないのではなく、痛みを強くする動作の回数、重さ、可動範囲などを一時的に減らします。

仕事や家事をすべて中止することが難しい場合には、物の位置を変える、両手を使う、動作を分ける、休憩を挟むといった工夫も検討します。

ステップ3:現在できる範囲の運動から始める

状態に応じて、肩の力を抜く運動、痛みの少ない範囲で動かす運動、軽い筋力トレーニングなどを行います。

痛みを我慢して一気に可動域を広げたり、最初から強い負荷をかけたりする必要はありません。

ステップ4:運動後の反応を確認する

運動中の痛みだけでなく、運動を終えたあとや翌日に症状がどのように変化したかを確認します。

運動後に痛みが明らかに強くなり、その状態が長く続く場合は、種目、回数、負荷、可動範囲などを見直します。

ステップ5:日常生活に必要な動作へ段階的に戻す

日常生活で必要なのは、単に肩が柔らかくなることではありません。

洗濯物を干す、棚の物を取る、荷物を持つ、趣味やスポーツを楽しむなど、その方が必要としている動作へ戻れることが目標です。

関節の動きや筋力が変化してきたら、実際の生活に近い動作を少しずつ練習していきます。

肩の痛みに対する運動では、肩甲骨や腱板のトレーニングが用いられることがあります。

しかし、どの運動が適しているかは、診断、症状の時期、筋力、可動域、運動経験などによって異なります。

インターネット上で紹介されている運動を無理にまねるのではなく、自分の状態に合わせて負荷を調整できる環境で取り組みましょう。

パーソナルトレーナーがサポートできるのは、医療機関で運動可能と判断された方に対して、身体機能や動作を確認し、安全に配慮しながら運動を段階的に進めることです。

診断や治療、薬の調整などが必要な場合には、医療機関へ相談していただく必要があります。

まとめ

痛みだけにとらわれず、必要な動きを少しずつ取り戻しましょう

最後に、今回ご紹介した内容をおさらいします。

ステップ1:肩の痛みが続く場合は、まず整形外科などの医療機関へ相談する
ステップ2:診断や症状の時期に合った対応方法を確認する
ステップ3:痛みを悪化させる負担を一時的に調整する
ステップ4:現在できる範囲から、運動を段階的に行う
ステップ5:運動後の反応を確認し、負荷や内容を調整する
ステップ6:仕事、家事、趣味などに必要な動作へ少しずつ戻していく

肩の痛みの経過や、運動によって得られる変化には個人差があります。

「肩甲骨を動かせば治る」「姿勢を直せば痛みが消える」といった一つの方法で、すべての肩の痛みに対応できるわけではありません。

一方で、医療機関で適切な評価を受け、現在の状態に合わせて負荷を調整しながら運動を続けることで、関節の動きや筋力、日常生活での動きやすさの改善を目指せる場合があります。

私自身も肩の痛みを経験しましたが、自分の経験だけを基準に指導するのではなく、身体の状態や目的を確認しながら、その方に必要な運動をご提案することを大切にしています。

痛みを我慢して運動するのではなく、安心して動かせる範囲を少しずつ広げ、やりたいことを楽しめる身体を目指していきましょう。

【本記事について】
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個人の症状に対する診断、治療、医学的助言を行うものではありません。

肩の痛みがある場合には、まず医師へご相談ください。運動中に強い痛み、しびれ、脱力、めまい、息苦しさなどが現れた場合は、運動を中止して医療機関へご相談ください。

【参考文献・参考情報】
・日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」
・日本整形外科学会「肩腱板断裂」
・日本整形外科学会「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」
・American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Rotator Cuff Injuries: Clinical Practice Guideline. 2025.
・Desmeules F, Roy JS, Lafrance S, et al. Rotator Cuff Tendinopathy Diagnosis, Nonsurgical Medical Care, and Rehabilitation: A Clinical Practice Guideline. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2025;55(4):235-274.
・Lafrance S, Charron M, Roy JS, et al. The Efficacy of Exercise Therapy for Rotator Cuff-Related Shoulder Pain: A Systematic Review and Meta-analysis. 2024.
・北村清一郎 監修、工藤慎太郎 編集ほか『運動療法その前に!運動器の臨床解剖アトラス』医学書院、2021年
・工藤慎太郎『運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略』医学書院、2017年


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